「神様どうかお父さんに息をください」①
「ぷーガールズ」、「どろぼうねこ君」、「門」、
「ねこ君の友だち」、「空に続く坂」、
など、このブログに書こうと考えて書いたものです。
夫はねこ君のおはなしまだ2作ですが、「シリーズで書いて」といいます。
グランマはどれも、もう少し手直ししたいと思っています。
でもね、じっくり考える時間がないのです。
で、
昔書いたお話です。全然売れてないようです。
アマゾンで売ってます。良かったら買って読んでくださいね。
で、ここに書きます。手直ししながら。
「神様どうかお父さんに息をください」①
(エンジェルチャイム)
お父さんが入院したのは去年の11月の終わりです。いつものように学校へ行こうとカバンを持った時、
「今日はパーティーをしますからね」
とお母さんが言いました。
「なんのパーティー?」
そのとき、宏は誕生日やクリスマスでもないのに、
何をお祝いするのかな?と思いました。
妹の真理恵が玄関から靴を履いたまま、部屋に飛び込んできました。
「ほんとう?うっれしい!まあるい大きなケーキ作ってね」
らんらんと歌いながらテーブルを一周しました。
「こら、なんですか靴を履いたままで」
お母さんに注意されると、真理恵はいきなり廊下にうつぶせになり、
あたまと足を上げてスイミングの真似をしながら玄関まで這っていきました。
宏も真理恵の後を追って玄関へ走って走っていきました。
後ろからお母さんが、
「行ってらっしゃい。自動車に気を付けてね」
いつもの朝で、いつもの生活だと思っていました。
サッカークラブの練習が終わって家に帰ると、お父さんがいました。
毎日宏が起きる頃会社へ行って、遅く帰って来るのに、
"こんなに早く帰って来るなんて、一体なんのパーティーが始まるのかな?とちょっと不思議に思いました。でも、ソファーに座って、新聞を読んでいるお父さんを見たのは久しぶりだったので、なんとなくうれしくて、ソファの横の本を取りに行く振りをしたり、途中でやっぱいいやと戻しに行ったり、窓の外を眺めに行ったり、視線を合わさないでお父さんの前を行ったり来たりしました。それから宏は二階の自分の部屋へ行きました。すごくいい気分でした。
「お兄ちゃん!始まるよ」
の声が聞こえて、降りていくと、真理恵がエプロンをして、テーブルに料理を運んでいました。お父さんの好きな卵焼き、お刺身、から揚げ、ハンバーグ、オムライス、皿だ、それに大きな丸いケーキ、ジュースやビールがいっぱい並んでいました。クリスマスと誕生日がいっぺんに来たみたいで、宏も真理恵もはしゃいでいました。
みんなでカンパイして食べ始めました。お父さんは宏に友達の事、サッカークラブのことを聞きました。サッカーはディフェンスの選手が捻挫して代役に選ばれ、補欠からメンバーになったことを、宏がちょっと得意になって話していると、
「お父さん、まあちゃんにも聞いて。話したいことがあるんだから」
と真理恵が割り込んできました。
「いつもこうなんだから、邪魔ばかりして!」
と宏が怒って睨みつけると、真理恵は突然立ち上がり、
「ママ、あれ持って来ようよ。まあちゃん探してくる」
と、隣の部屋へ行って、押入からエンジェルチャイムを持ってきました。