友だちねこ君②
ねこ君は起き上がって、背伸びをしました。
それからひょんと降りて窓の前に来ました。
「君の夢は簡単。僕の家へおいで。
この出窓で思いっきり寝ればいい。
ずっと寝てればいい」
「俺は毎日この舌と足で、毛づくろいはしているが、
のみはいるし汚い。それでもいいのか?」
「夢がそんなことで叶えられなくなるの?
ばかばかしい」
「おまえのお母さんに叱られる」
「お母さんは、
誰でも通れるように庭にけもの道を作った。
みんなが幸せになるのが好きなんだ。
怒るはずがない。こーっちへ来て」
ねこ君が居間を出るあいだに、
友だちねこ君は
ぴゅーんと足を大きく振って走り、
猫専用の通し口の前に、お行儀よく座って待ってました。
「ここからどうぞ」
ねこ君は
ドアの下の通し口の前で、右足を前に出して言うと、
友だちねこ君は
ゆっくりと頭を入れ、次に足を、最後に胴体が通し口を通過しました。
時間にすれば1秒か2秒でしたが、
友だちねこ君には一瞬と思えたし、
地球から見える
天の川に連なる惑星のひとつへ移る、
長い時間のようにも感じました。
中に入ると、友だちねこ君は、
「風の音が違う」
と思いました。
また、
「風が優しい」
とも思いました。
さらに、
「包むあったかさが漂っている」
と思いました。
「これが家というものか」
友だちねこ君は眼を閉じて、
この風とこの暖かさの中で大きく深呼吸しました。