哲学が魚に⑫仮題
「架空のお話し。ピノキオを探しに行ったおじいさんがクジラに飲み込まれ、
それを知ったピノキオもクジラのお腹に入り再会するのよ。
そして火を焚いて、煙でクジラがくしゃみをした時に飛び出して助かるって訳」
「人間は火を産みだせる。いいですね」
「君だって万物の智を活かせてる、生き抜くためのなにか、
英明(えいめい)が海の世界にもあったってこと知ったわ」
「どういうことですか?」
「助かりたいと真剣に考えて、助かる方法を考えだしてそれをやり遂げるってこと」
辻さんは驚きました。
海の世界にもう一つの世界、否海に幾つかの世界が存していて、
そこには考える生きものがいるってこと、知ったのですから。
「私は7年も生きていますのでね」
彼は自慢して、と言うより当然の沙汰であると話を続けました。
「いろんな話をもっと聞きたくなりましたよ。もっと居てほしいわ」
辻さんは心から思いました。
棚からオキアミを乾燥させたテトラクリルマリンを指で掴んで差し出すと
彼は餌を口に入れました。
「この食はとてもおいしい」
彼はお代わりを要求して口を水面に突き出しました。
感染が心配なので、教えてもらったマリンテックシュアや
海藻がいっぱい入ったキョーリンの餌も買いました。
初めての餌をシュッツシュッツと飲み込む彼に警戒心は無く、
むしろ興味津々、関心を寄せているのが分かります。
彼は未来に向けてなら、ものおじせず探求する心を持っていると思いました。