哲学が魚に⑭仮題
イワシは更に、
「2011年3月11日の東北沖大地震が起きて、
マグニチュウド9は40メートルの津波を発生させ、多くの仲間や河童が流され命を落としました。
それは自然の成す事。耐えねばなりません。
原子力発電所事故で大量の放射性が海に流れて、メルトダウンというのしょうか。
それが発生した時も人間が為したことですが、私たちは耐えましたよ。
全て、想定外の事故でしたから。誰を恨むってことはできません。
しかし、イワシは海の番人否番魚だってこと知っていますか?」
「何?それ?」
「番魚の故は色々ありますが、一つに大地震予知があります」
「ほんと?」
そんなの聞いてないよと辻さんは言おうとしましたが、
「はい。私たちは命をかけて震源地に集結し、海洋の全てのものに警笛を鳴らす運命があります」
に、返す言葉を失いました。
何故って、
他(た)のために自分の死を差し出す定めを持つ生き物があると知ったからです。
「イワシは、ですから海中に生きる者たちに信頼を頂き、
番魚として選ばれているのです。ここに来る使命となった次第です」
彼はふうっと口を窄(つぼ)ませました。
イワシの、魚のため息を辻さんは初めて聴きました。
「餌を、さっきの餌くれませんか?なにせ、話すという作業は
私にとって最大のエネルギーを使わなければなりませんので、
疲れました。休憩です」
辻さんは手に持っていたプラスチックの餌ボトルから
ドライオキアミをイワシの口に入れました。
それから自分にもコーヒーがいると思いました。
キッチンに戻り湯を沸かし熱い淹れたてコーヒーを飲もうと手に持つと
彼は続けました。