空に続く坂 ②
駅前広場には
人が両手を広げたように
右と左に道がわかれています。
左は国道に続く道ですが、
右は高くて険しい坂がまっすぐ続いています。
ふ~ちゃんは道路にほおづえついて坂を見あげました。
「きれいですな~。
桜はどの木も花が重なって
いくつもの灯りのようでして。
いまのこの日は
この世の幻想世界の気配といえます」
ふ~ちゃんの頭に登っていたありんこ博士が
坂をながめて言いました。
すると、
「博士よ、ちいっとはおれにも
わかるっさーのようにはなせ」
と、ごろつきにゃんが怒って
彼をつめでピンタしようと前足を上げたとき、
「行くよ、坂の上まで」
ふ~ちゃんがいきなり立ち上がって歩き出しました。
ありはふ~ちゃんの髪の毛に、
猫は傷ついた足を地面にちょっとふれると
すぐあげて
おかしな格好でついてきました。
春爛漫、
風が時々浮かれ気味に
人と道の隙間や
人と人の隙間を
走っていきます。
おひさまが輝いています。
両側に桜の木が頂上まで続いていて、花は満開。
木にも道にも人の肩にも、
ひらひらな桜が舞い降りていました。