どろぼうねこ君
ねこ君ちのとなりのさかなやうおたつのおじさんが、
おおきなゴムのまえかけと、はちまきしめて、
ねこ君のいえにきました。
「ねこ君がみせのさかなをとってった」
ねこ君のおかあさんは、
「ああ、ごめんなさい。おかね、はらいますから」
と、なんかいもあたまをさげてあやまりました。
おじさんはおこって、
「いりませんよっ。よいこのねこ君になってもらいたい」
と、はちまきをきゅっとまわして、かえっていきました。
おかあさんがキッチンへいくと、
おさかなが、ドアのまえにおいてありました。
ねこ君はそのまえにすわってにこにこしています。
おかあさんが、
「あのね」
とねこ君にはなしかけようとしたら、
また、うおたつのおじさんがきました。
「ねこ君が、みせに、しんだすずめをおいてっちゃった」
おじさんはかなしそうに、
「うちはさかなやで、しんだすずめはうれない。
だめだよって、ねこ君にいってくださいよ」
はちまきをそーっとまわしてかえっていきました。
ねこ君はみんながよろこぶことがしたいとおもっています。
おさかながあれば、おさかなだいすきおかあさんはよろこぶにちがいないし、
ねこ君がだいすきなものをおじさんにプレゼントしたら、
まあるくわらって、
「ねこ君、ありがとうっ」
っていうにちがいない。
おじさんのえがおがうかぶと、
ねこ君はにやにや、わらいがとまらなくなりました。
そしたら、
「もういっかい、さかなとこうかんしてこようっと」
ねこ君はせかいでいちばんすきなものをみつけにそとへとびだしました。
うおたつのおじさんがまたきて、
こんどはあおいかおしてちいさなこえでいいました。
「ねこ君がみせのさかなをまたとって、かわりにしんだねずみをおいてった」
おかあさんは、
「ごめんなさい」
となんかいもあやまりました。
おじさんはしょんぼり、
「うちはさかなやで、しんだネズミはうれない。
おきゃくさんがこわがってにげてった」
というと、
ごむのまえかけをきゅ~うきゅ~うとまわして、かえっていきました。
おかあさんがキッチンへいくと、
ドアのまえにさかながもういっぴきおいてありました。
ねこ君はそのまえにすわってにこにこしています。
「どうしたらわかってもらえるかしら?」
おかあさんはこまって、おにわでくるくるまわりはじめると、
おとうさんねこがかえってきました。
「うーん」
とおとうさんはうでをくみ、
「ねこ君はみんながしあわせになるためにしている。それがもんだいだ」
といいました。おかあさんは、
「どろぼうねこ君になっちゃた」
と、かなしいかおをしました。
おとうさんは、
「おれいをもっていくどろぼうはいない。おかえしはちゃんとしてる」
といって、せなかをぴーんとのばしました。
おかあさんとおとうさんがねこ君のことでいいあいをしてると、
こんどはねこ君がかなしくなりました。
ねこ君はあしおとをけしておかあさんのうしろへいき、
おかあさんのかたから、あたまにぴょんとのって、
あしでもみもみ、マッサージをはじめました。
おかあさんはきもちよくなって、いいあいはどこかにとんでってしまいました。
すると、おとうさんとおかあさんはひらめいて、おたがいのあしでた~っち。
おかあさんがねんどとえのぐをもってきて、
おとうさんがひかるさかなをつくりました。
おかあさんは、さかなをもってきて
ねんどにこすりつけてにおいをだしました。
いいにおいがへやじゅうしています。
それから、おとうさんはらんらんらんとうたいながらさかなやさんちへいきました。
ねこ君もはなをぴくぴくうごかして、うしろからついてきました。
おじさんがひかるねんどのさかなをみせのたなにのせると、
ねこ君の目がきらり。
ねこ君はマッハとおなじはやさで、さかなをがぶりと口にくわえると、
いちもくさんににげていきました。
みんなでゆうごはんです。
「ありがとう。おさかないっぱいたべたので、しばらくはいりませんよ」
と、おかあさんはねこ君におれいをいってから、
おじさんちのおさかなはおかねをだしてかうもの、とはなしました
きょう、うおたつはおやすみです。
おひさまはげんきいっぱいにみんなをてらしています。
おじさんはえんだいでこっくりこっくりいねむりをはじめました。
そこへ、ねこ君がにんじゃのようにそーっとちかづいて、
はちまきをしめたおじさんのおでこをひとなめしてから、
かたをもみもみ、マッサージをはじめました。
おじさんはあんまりきもちよくて、ぐっすりねこんでしまいました。
おじさんのすやすやがおをのぞいて、
はなをほっぺにすりつけたら、
ねこ君はうれしくなって、しあわせになりました。