不動産屋を始めたグランマの 絵のない絵本創作 

挿絵書いてくれる人募集します。連絡ください。

哲学が魚に➄仮題

「魚を釣る」

は、この楽しさを超える何かが

あるのかもしれない

と思ったからです。

次の日、

漁師さんに教えてもらった乗合釣り船で、沖へ出ました。

 

風はなく、晴れ渡った朝でしたが、

浜から離れだすと、

船は波に乗ってどんどん揺れ始め、

初日は魚を釣るどころではない

自分の体に出会って

一匹も釣れませんでした。

「残念だったな、今日はあんた、金はなし」

と、船長さんは辻さんの手に、

差し出したお金を戻してくれました。

辻さんは船長が気に入って

沖合に出かける時はいつも

彼の船に乗せてもらいました。

大漁の日は魚を売ってくれたりします。

大きな真鯛やら何やらを何尾も釣った時などは

船代一カ月分を払えたほどでした。

名前は忘れましたが、高級魚を乗合船に乗った素人が釣るなんて

奇跡なんだそうです。

その時ばかりは辻さんは

自信に溢れた輝きを持ちました。

何よりも新鮮な魚を頂くと元気が沸き上がります。

この日、

辻さんはいつものように、乗合船で先へ先へと進みました。

どんなに行っても

目にする水平線は同じで

視界から消えることはありません。

「船長、海の真ん中迄行ってください」

「無理だ。太平洋の真ん中へ行くには船が小さすぎる」

と、

彼は艫(とも)先から続く航跡波

見つめながら、エンジンを止めました。

辻さんも振り返ると、

 

いつもは

視界に墨で一筆書きした

細い流れのような海岸線

が見えるのですが、

今日は消えていました。

でもね、

この位置は、

人間から見たら

太平洋に向かってどんどん進んだ遠いところですが、

海から見たら

まだまだ海の端っこなのです。