不動産屋を始めたグランマの 絵のない絵本創作 

挿絵書いてくれる人募集します。連絡ください。

哲学が魚に②( 仮題)

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人はまばらで

遠くに一人、

また遠くに一人といる程度でしたので、

辻さんは砂浜に正座して

両手で砂を掘り起こし始めました。

それから

その穴に体を埋めて顔だけ出し、寝転がりました。

砂の中はだんだん暖かくなってなんとも気持ちよく、

とうとと浅い眠りに誘われ、

どれぐらい経ったでしょうか。

目を開けて海を眺めていたら、

小さな魚が一匹ぴょんと飛び上がり

波の隙間に消えました。

するとまた、

魚がまっすぐ天に向かって飛び上がると

海に消えました。

同じ魚なのか、違う魚なのか、群れの1匹なのか、

定かではありません。

なんかとても楽しくなって、

「おさかなみようっと」

と、

また不意にことばが浮かぶと

立ち上がり、砂を払い、波打ち際に佇みましたが、

魚は目の前には現れませんでした。

で、

砂浜を蹴散らしてどんどん歩を進めていくと、

船が見え、傍らで漁師さんが

網の手入れをしていました。

日の出前に海の沖合に出て帰船する時間は

漁の取れ具合によるのですが、

今朝は魚がたくさん取れたので

浜に戻って休憩したあとの、

いつもの作業をしているのです。

穴の空いた網をふさぐ姿を

じっと見つめました。

小さな穴や両手が入るほどの穴、

もっと大きな穴がまたたく間にきれいになっていきます。

面白いというより手さばきの速さは

ビートのきいた音楽が似合うなあと、

「えんやこら」「えんやこらさっと」

を早いリズムで

漁師さんの手の動きに合わせて

即興で歌いました。

漁師さんが掛け声を入れたら

不思議と格好いい響きとなって辺りを包みました。